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大天使がつくられる過程 2
実際の所、“大天使の生まれ変わり”の判別方法など予言や占いによる所が大きい。
癒しの魔法を持っていても、修行を積んだとてきちんと使える人間は少なく
ある一定の数値を越えていなければ授業も受けられず切り捨てられるのだ。
だから、レンシアが本当に“大天使の生まれ変わり”だという可能性も皆無というわけでは無かったが
レンシアは自分で、恐らく違うのだろう、という事はなんとなく感じていた。
だがヴァガ伯爵は、
本当かどうかなのはどうでも良く、癒しの魔法が使える真実さえあれば皇帝家に取り入る事ができると踏み
レンシアが12歳になれば早速売り込みに動いた。
レンシアは様々な場所を連れ回され、癒しの魔法を披露して回った。
上位貴族や占い師、癒しの魔法を授かり皇帝家付きとなっている数少ない魔法使い、そして皇帝家。
誰もがレンシアの能力に唸り、まず間違い無いだろうと判を押した。
それは確かにインチキでは無かった。
ただ、少しばかりレンシアは“読めた”ので、相手が喜びそうな振る舞いをしただけにすぎないのだが。
13歳になり、レンシアは次期皇帝の婚約者として契約をする運びとなった。
初めて会ったエルメーザは、同い年とは思えない程の雰囲気を纏っていた。
ビロードのような漆黒の黒髪、鋭く輝く深紅の瞳、よく響く重厚感のある声。
立っているだけでそこに光が集まるようだった。
彼が国を統べる者なのだと子どもながらに理解でき、
同じ人間なのにここまで違うものなのかとレンシアは呆然と彼を見つめてしまった。
謁見前は、まだガキだ、と息巻いていたヴァガ伯爵も彼の前では地面に額がつくような勢いで頭を下げていた。
簡易的な契約を終え、
レンシアは一般的な教養や勉学を学ぶ為の貴族学校へと通う事になる。
次期皇帝の婚約者として周りの生徒や教師達から厳しい眼で見られながらも、
エルメーザの隣に立つに相応しい人間にならなければと必死だった。
18歳になればエルメーザと共にハートン学園に共に通う事になる。
その際に彼に恥をかかせてしまう事のないように、と。
17歳で二度目の契約を結んだ。
それは、正式に婚姻を約束するような契約だ。
大勢の人間達の前で様々な条約を誓わされ、
上級守護魔法使いから契約の魔法をかけられる事になる。
それはお互いの絆を結ぶようで、
決して逃げられぬよう、離れられぬようにするような楔だった。
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