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追いつけない 2

丁度食堂の前を通り掛かると、何やらざわざわとした気配が強くなる。 食堂で昼食をとる生徒がほとんどの為、 この時間は人が集まっているだろうから仕方がないのかもしれないが それにしても浮ついたような声がよく入ってくるので レンシアはつい気になって中を覗いてしまった。 何故か生徒達が集まっていて層になっていたが、こちらへ向かって誰かが歩いてくると生徒の層はさっと別れて道が開かれる。 その向こうには大層目立つ四人組がいて、 思わず呆然と眺めてしまった。 多分学年で一番背が高いイオンと、同じように背が高くて炎のような赤茶色の髪が目立つ生徒。 分厚い眼鏡をかけた丈の長いローブ姿の生徒と、そして、婚約者のエルメーザだった。 「あれ、レンシアさん」 一番最初に気付いて声をかけてきたのはイオンだった。 彼には借りがあったので、見かけたら謝っておかねばとは思っていたのだが そんな事よりも普通に彼らと共にいるエルメーザを見上げてしまう。 「え…、え?エルメーザ様…何をされているのですか?」 「何って…昼食に決まっているだろう」 「食堂でお召し上がりになられていたのですか…?」 「そうだ。イオンくん達とな」 「い、イオンくん…?」 レンシアは思わず本当にエルメーザなのだろうかと疑ってしまう。 薄らとした記憶の中で、確か二人は怒鳴り合っていたはずだ。それも自分の所為で。 なのに目の前にいる二人は何故か仲が良さそうに隣を歩いている。

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