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悪い夢 5
全て集め終わる頃には、彼はレンシアをじっと見ていた。
金色の瞳は涙で滲んでいて、酷く傷付けられている事を表している。
「…あなたはとても優秀だと聞いています。
魔法を授かるのは器ではなく魂…
身分や血筋よりも、魂に宿るのです」
「……そうみたいだねぇ。“選ばれている人”は説得力が違うや…」
「ジョルシヒンさん…、俺達のような存在が良く思われないのは致し方がない事なのかもしれません…
…だからってこんな事を許してはいけません…
せめて逃げるとか、助けを求めるとか…何か対処をしなければ…
あなたが加害者を作ってしまう事になるのですよ…」
「っ…説教なんて聞きたくない!悪意をぶつけられながら尚も相手を思いやれって!?」
彼は急にレンシアに掴みかかってくると、泣きながらその金色の瞳で睨みつけてくる。
折角拾い集めたものが手から滑り落ちてバサバサと床に落ちていった。
「ジョルシヒンさん……」
「あんたと僕は真逆だ…同じような場所に居たって魂が違うんだろうな…!
…どうやったら毎日殴られて犯されてた人間が…ただ使われるだけの存在が…魂を汚さずに美しく崇高に生きられるっていうんだよ…!
あんたと一緒にするな…っ」
彼の怒りを浴びながら、レンシアは目を細めた。
「…ただ、美しく崇高に見せているだけですよ…俺は本当はそんなに立派ではない…
でも…あなたが目の前でそんなに傷付いていたら説教の一つでもしたくなりますよ…」
彼は今にも噛みつきそうな獣のような目でレンシアを捉えていたが、やがて首根を掴んでいた手を乱暴に離した。
「…は…、ああそうかい……どうせあんたには全部“解っている”んだろうね…
どうせ…力が魂より上回る事なんかない…
癪だと解ったって…使われてやるしかないんだ」
彼は片手で乱暴に血を拭いながらもフラフラと立ち上がった。
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