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大嵐 2
教師がいない隙に生徒達は窓に張り付いている。
「本当に落ちたっぽいぞ」
「中庭の大木がまる焦げだ」
この教室からは丁度中庭が見下ろせるので、生徒達は皆どこかお祭りのようにはしゃいだ声をあげている。
「すげーエネルギーだよな雷って…!」
確かに雷が近くに落ちるのはなかなかの大ニュースだったが、生徒達は沖縄で雪が降ったようにはしゃいでいる。
「精霊の呪いだって話もあるぞ…」
「最近精霊を呼ぶ奴が多いからその所為なのかなぁ…」
科学とは少し縁遠いこの世界では雷の仕組みはあまり解明されていないのか、
古代の人間みたいな事を言っている生徒達の背中を見ながら、精霊、と思わず呟いてしまう。
雷が精霊の仕業かどうかは分からないが、その存在は最近学園内のトレンドだった。
「ローラは相変わらずすごいみたいやな」
イオンと同じく隣に大人しく着席していたイヴィトが話しかけてくる。
「なんかリアクションしにくいけどね…」
ローラは確かに凄いし、予想の魔法の能力は高いのかもしれないが
彼がそれをちゃんと使っているかどうかは定かではない。
不得意な魔法はさっぱり分からないので、予想の魔法がどういったものなのか自体知り得ない事だが。
「予想の魔法の先生っていつもオーバーに褒めてるというか」
「わかるわ〜あんな風に言われたらちょっと自己肯定感上がってまうかも?」
イヴィトは頷きながらもくすくす笑ってくれた。
いつも隣の教室からは大袈裟なリアクションの声が聞こえてくるのだが、その度にこちらの先生は飛び出していって
授業が有耶無耶になる事はしょっちゅうだった。
今日も例によってそうなってしまい、
結局終業のベルが鳴るまで先生方は言い争いをしていたようだ。
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