101 / 513
大嵐 4
「レンシアさん?」
「よかった、探していたのです…」
「俺を?」
「ええ…、本当はジョルシヒンさんを探していたのですが…」
彼はそう言いながらも、両手で抱えていたいくつかの本を差し出してくる。
「…彼に返していただけませんか?」
「これって…リウムのノート?」
レンシアに差し出されたノートには、リウムの名前が刻まれている。
一緒に教科書なども重ねられているようだった。
何故彼がリウムのノートや教科書を持っているのかは謎だったが、イオンは受け取った。
「どうしてレンシアさんが…」
「……拾ったのです」
「え?」
「では…俺はこれで」
レンシアはぺこりと頭を下げると、踵を返し足早に去って行ってしまった。
授業に必須なノートや教科書を落とすなんてことあるだろうか。
渡された本束を見ると、彼は他の生徒よりも新しいものを持っているはずなのになんだかボロボロにも見える。
「まさに台風の目のような人だな」
「どういうこと?」
「そこだけ晴れているんだぞ」
台風という概念すら知らなさそうなイヴィトは首を傾けている。
意味を知っているイオンでも全然意味がわからないのだが。
とりあえずクラスの教室に戻った時にでも渡そうとリウムの本達を大切に抱えて、
イオンは二人と歩き出すのだった。
ともだちにシェアしよう!

