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2人の天使 4
「……どうしたらいいんだろう…」
レンシアは中庭で一人ポツンと座って空を見上げた。
昨日雷が落ちたらしく、中央付近にあった背の高い木は黒焦げになっている。
その恐ろしい姿に今日は自分以外誰も来ていないのだ。
丁度一人で考えたかったので都合が良かったが、流石にその痛々しい姿には心が痛んでしまう。
「…まだ死んでない?…ふふ、そうですね。確かに失礼ですよね。
あなたはこんなに立派に生きているのにね…」
ずっとずっと昔から、この学園に存在していたという大木は
雷ぐらい屁でもないわいとふんぞりかえっている。
勝手に死んだ事にされて呆れている様子だ。
「分からないって…辛いですね。
あなた達の心は手に取るように伝わってくるのに…
人の考えや未来の事はとても見え辛い…」
レンシアはつい焼け焦げた大木に愚痴ってしまった。
所詮、どうなるか、なんて自分には決められない事なのだろう。
言われた通りに振る舞い、言われた通りに此処にいるしかない。
自分で決められる事なんて何一つないのかもしれない。
レンシアはそう感じてしまっていた。
大木の上半分がなくなったことで、いつもよりも空がよく見える。
ぼんやりと晴れ渡った空を見上げると、
どこかに飛んで行きたくなってしまう。
遠く遠く、誰もいないところ。誰にも見つからない場所。
飛び上がって浮かび上がって、自由になれたら。
昔からよくそんな空想をしていた。
そして、鳥でもない、飛べもしない自分に悲しくなるのだ。
期待したって出来やしない。
だったら、最初から期待なんてしない方がいい。
レンシアはため息を溢しながら俯いた。
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