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魂のイロ 1

なんだか、ずっと頭がぼうっとしていて定期テストも散々だったような気がする。 問題が解けたかどうかも分からないし。 ここのところレンシアはずっとそんな状態だった。 だけど寮の部屋に帰るとエルメーザがいるので、なんだか顔を合わせ辛くて結局図書室で本を読み耽って時間をずらして戻るし 朝も彼が起き出す前に部屋を出るようにした。 鏡の中の自分はいつもと変わらないはずなのに、妙に歪んで見える。 襟足が伸びてきていて、そろそろ髪を切らなければと感じる。 以前に長ったらしいと陰気臭いとヴァガ伯爵に怒られた。 見てくれにも気を遣って、少しでも美しくいなければ。 でもそれは誰のために? 勉強だって魔法だって 一体誰のためにやっていけばいいのだろう。 エルメーザのため? ヴァガ伯爵のため? 国のため? “大天使の生まれ変わり”でもない自分は 誰も愛さないし必要とすらされないというのに? 「ヴァガ・レンシア」 よく通るはっきりした声が脳に飛び込んできて、レンシアはハッとなった。 顔を上げると、学園内のホールの中央に現在の校長の姿があり 周りにいた生徒達の視線はこちらに集まっていた。 レンシアは慌てて立ち上がり、校長の元へと歩いていった。 「“疎通”の成績、実に見事であった。総合成績も実に優秀だ。」 「…ええ…ありがとうございます…」 レンシアは頭を下げながら校長から差し出された賞状を受け取った。 辺りからは拍手が湧き起こり、レンシアは足早に席へと戻る。 戻る途中で他の生徒からは、さすがです、と言った言葉を貰うがレンシアはイマイチよく分からないままだ。 定期テストの結果を受けた後、半年間の成績優秀者を讃える表彰式的なものが開かれるらしいのだが 一年生にとっては今回が初めてなので皆まだ実感がなさそうだ。 入学して半年間の成績なんて似たようなものだろう。 レンシアは席に戻ると、渡された賞状をぼんやりと見下ろした。 何が書いてあるのか読めるはずなのに全然頭に入ってこない。

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