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魂のイロ 3

解散になってもレンシアは暫く動けなかったが、周りは友人と喋り始める生徒達の声で賑やかになっていった。 少し先の方でリウムは人に囲まれており、その中心で彼は頬を染めながら愛らしい笑顔を浮かべていた。 レンシアは胸の中に妙な黒い感情が渦巻くのを感じて、 ここにいてはいけないとすぐに立ち上がった。 「レンシアさん!」 ホールを出た所で声をかけられて、レンシアは立ち止まった。 振り返れずにいたレンシアの前に回り込んできたのはイオンだった。 「すごいですね!表彰されちゃうなんて。 疎通の先生も、ドラゴンとだって喋れちゃうかも〜って褒めてましたもんね」 イオンは屈託のない笑顔を向けてくれるけど、さっきの事があったからだろうと思うとレンシアは俯きがちに苦笑した。 「…いいですよ…気を遣わないでください」 「え?」 「あなたもジョルシヒンさんの所へ行っては?」 「…あー、なんでか呼ばれてましたもんね…」 イオンは苦笑しながらも、でもいいんすよ人気そうだし、と呟いた。 リウムが人気だから自分にしているのだろうか。 不意に思い付いた事は、優しい彼が思うわけないのに。 自分の心の汚さに、レンシアは両手を握り締めてしまい賞状はぐしゃぐしゃになっていく。 「……この前魔法がわかったばかりの人に、越されてしまうなんて “大天使の生まれ変わり”失格ですよね……」 震える声で呟いてしまった。 癒しの魔法を有していると分かってから、10年程努力をして数値を伸ばしてきた。 それが一瞬で越えられてしまうなんて、まさに天才としか言いようがない。 それは、生まれ変わりを強く示唆しているようで。 「あ、いたいた!イオンくん!」 花の咲いたような声が転がって、パタパタと走ってくる足音と共にリウムが現れた。

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