120 / 513

幻獣生物 2

レンシアはすぐに立ち上がって、池を回り込み森の方へと向かった。 背の高い木が密集している場所はあまり手付かずになっているのか雑草も生えていて、 生徒達もあまり近付かない場所だった。 幻獣生物もたまにやってくるから気をつけるようにと言われている場所でもある。 「っ…いや、やめて…」 森の中を突き進むと、鳥のようなものが暴れている声と人の叫び声が聞こえてくる。 怒りのような感情と、痛みや悲しみ。そんな気配が漂ってきて レンシアは声と気配を頼りにそちらに走っていった。 すると巨木の前に生徒が一人倒れていて、 大きな鳥のような生物が二匹、彼を取り囲んでいる。 「…っ、な…」 鳥は怒っているらしく、ギィギィと警戒音のような恐ろしい声を出しながら飛び上がっては爪を振り下ろし、 嘴で人間の身体を抉ろうとしている。 レンシアは考えるよりも先に体が動いてしまい、倒れている誰かと鳥の間に乱入し両手を広げた。 白い頭に黒い翼、金色に光る鋭い嘴。 ギラギラと光らせている目は怒りに満ちている。 「やめなさい!何をしているのですか!?」 『……ギギィ…その人間を殺してやる…』 「…殺すだなんて…! あなた達フレスベルグは誇り高き大鷲…、無闇に命を奪う事はしないのでは?」 『その人間は我らの卵を盗んだのだ!!』 「なんですって」 レンシアは思わず足元に蹲る生徒を見下ろした。 這いつくばっている生徒は、地面に突っ伏したまま首を横に振った。 『何故そんな所業ができる!?』 『欲深い卑しい生き物め!』 「お…落ち着いてください…俺が話しますから、お願いです…」 懇願すると大鷲二匹はぎろりとレンシアを睨みながら静かに地面に降り立ち翼を畳んでくれた。

ともだちにシェアしよう!