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幻獣生物 3
レンシアはすかさず人間を助け起こした。
制服は切り裂かれ、その下の肌からも血が滲んでいる。
栗色の髪の生徒は、金色の瞳を滲ませてこちらを見上げてくる。
「ジョルシヒンさん…!?」
「…っ…はめられたんだ」
彼は咳き込みながら、またあの怒りに満ちた瞳をしている。
よく見ると彼の両手は縛られていた。
大鷲達とリウム、辺りは怒りの感覚に溢れてどんどん増幅しているようでもあった。
「フレスベルグの卵は高級品ですが…」
「僕じゃない…、本当だ…!」
「では誰が?」
「分からない、ここに呼び出されて…後ろから殴られて…気付いたら……」
泣きながら訴えてくるリウムは嘘をついているようには見えなかった。
また虐められていたのだろうか。だとしても限度というものがある。
レンシアは自分の中にも怒りが沸々と沸き起こってきたが、飲み込まれてはいけないと言い聞かせる。
「…卵はどこに?」
「わか、分からないよ…っ」
首を横に振るリウムに、レンシアは辺りを見回した。
「誰か見ていませんか!教えてください!」
声を張り上げると、様々な存在の気配が一斉に流れ込んでくる。
だが大鷲はイラついているように鋭い爪で地面を抉り始めた。
『…謀ったわけではあるまいな小僧』
増幅される怒りの気配にどうにか飲み込まれないように保ちながら、
レンシアは目を閉じて森の植物や小さな虫達の声に集中した。
戸惑い、恐怖、怒り、不審。
森の空気は澱み、不安に包まれている。
レンシアは悲しくなってしまい、立ち上がった。
「……傷つけ合う必要はないはずなのに」
大鷲達は大切な卵を守りたくて、
森達はただ生物の営みを見守っていただけなのに。
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