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幻獣生物 4
レンシアは両手を組んで、静かに祈った。
みんなの心が少しでも落ち着くといいのに、と。
すると段々と不安を帯びてざわめいていたものが薄れていって、
いつも通りの穏やかな森の雰囲気に戻りつつあった。
『ここにあるよ』
不意に上から声が降ってきて、レンシアは見上げた。
丁度自分達の頭上に伸びていた巨木の枝から紐が吊るしてあり、そこには籠のようなものがぶら下がっている。
「…あ」
『ぼうやたち!!』
レンシアの目線で気が付いたのか、大鷲の一匹が飛び上がり籠めがけて突進している。
『ああっよかった!無事だわ!』
一匹は頭上で鳴いている。
レンシアはホッと胸を撫で下ろした。
だがもう一匹の大鷲にぎろりと睨まれていることに気付くと、レンシアはぺこりと頭を下げた。
「…申し訳ございません、あなた方の大切な存在を危険な目に合わせてしまい…」
『ふん…何故お前たちは同じ種族同士で争うのだ?
弱き存在を守るどころか挫くとは実に愚かなことだ』
「…ええ…本当に…その通りですね
あなた方からすれば不幸な生き物だとお思いになるでしょう…
心が不安定で、常に揺れ動き、それに翻弄されてしまう。それが人間という生き物なのです…」
動植物や誇り高き幻獣生物達は人のように掻き乱される事はないのかもしれない。
常に何が一番大切で優先すべき事なのかを分かっている。
一匹の大鷲が籠を咥えて戻ってきた。
『今回はお前の顔に免じて許してやる、“ᚴᛖᚱᛁᚾᚵᚢ”
だが二度と我らの聖域を犯し信頼を損ねるような真似はせぬよう人間共を躾けておけ』
「躾けるなんて…そんな力俺には…」
大鷲はレンシアの言葉を待たずに大きな翼を広げた。
バサバサと羽ばたかれるとその風圧に倒れそうになってしまい思わず片手で顔を覆った。
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