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幻獣生物 6

エルメーザの目はまるで罪人や愚かな存在を見下すような目だった。 今までだってよく思われていない事は承知していたけど、そんな目で見られたことなんてなくて。 彼はそれ以上は何も言わずにリウムを連れ生徒達と共に去って行ってしまった。 何が起きたのかよく分からない。 だけどこれだけは確かだと気付いてしまった。 エルメーザはリウムを愛している。 大鷲達が愛する存在を脅かされ怒り狂ったように、 彼もまた、愛しい存在を傷付けられて怒っていた。 「……俺は……」 レンシアは自分の手を見下ろしながら、 また胸が空っぽになっていくような感覚を感じた。 もう、潮時なのかもしれない。 いつかこうなる気がしていた。 肩を落とすように腕を下ろして、地面を見つめたまま細く息を吐き出した。 頭がぐらぐらして倒れてしまいそう。 いつも感じているはずの気配も感覚も何一つ感じられない。 自分の思考も感覚すらも。 『………イ……』 突然ぞわりとした恐ろしい気配を感じ、レンシアは顔を上げて振り返った。 以前にも似たような感覚を味わった事がある。 辺りを見回すが、それは先程と変わらない森の風景が広がっているだけだった。 「…っ…」 レンシアは逃げ出すように走り出した。 行ける場所なんてどこにもないけど、 また、ここにいたくないような感覚がして。 見られている気がする。 恐ろしいその視線から逃げたくて、とにかく走ってしまうのだった。

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