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真意と想念 1
最近の学園内の噂三点セットはこれだ。
精霊を呼ぶ黒魔術師が学園内にいる!
パーティーに皇帝がくる!
エルメーザとリウムが付き合ってる!
学校の中で広まっている噂なんて都市伝説並みに信憑性に欠けるものだったが、黒魔術師や皇帝はさておき
エルメーザ達の件はイオンも証人並みの現場を抑えてしまっていたため複雑だった。
だが、普段はキリリとしているエルメーザがリウムにだけ微笑みかける事や
やたらと彼らの距離が近い事、そして二人の間に漂う甘い雰囲気は誰がどう見ても恋人同士のそれで
立場があるんだから少しくらいは隠せやというほどだった。
しかしその二人の関係に便乗して浮上してくる話題はやはりレンシアの事である。
というのもレンシアは最近かなり評判が悪くなっていた。
仲睦まじい二人に嫉妬しリウムの悪い噂を流しているとか、
上級生を使ってリウムをいじめているとか。
更に他の都市伝説にまで結びつけて、二人を呪うために精霊を呼びつけているとか。
そして、リウムこそが“大天使の生まれ変わり”で、レンシアはとんだペテン師であるという噂まで出てくる始末だった。
リウムは編入当初から、能力一位がわからないと悩んでいる様子だったがついにそれが判明した。
それがまさかの“癒しの魔法”だったらしいのだ。
上位能力一位が癒しの魔法だった魔法使いなど記録上一人か二人しかいない事らしく、
彼の周りはあっという間にいつも以上に騒がしくなって行った。
そりゃあ主人公ですもんねとイオンは納得でしかなかったが、どんどんレンシアにヘイトが集まっていき
日に日にレンシアが憔悴していってる様は見ていて痛々しくて
イオンはついつい彼に構ってしまうのだが、適当にあしらわれている日々だった。
レンシアは、なんだか前よりもギリギリで立っているようにも見えた。
それでも気丈に振る舞っているし、相変わらず勉学に励んでいるようでもあったが
以前にもまして鬼気迫る勢いで学業に打ち込む姿は、やっぱり嫉妬なんだ、と周りを余計に誤解されている要因でしかないようだった。
ただ、頑張っているだけなのに。とイオンは悲しかった。
それは孤立していた井小田を思い出されるから。
そうやって、どうしたらいいかと考えている矢先だった。
リウムは学園の中にある森で幻獣生物に襲われたらしく、ボロボロの状態で部屋に運ばれてきた。
身体中あちこち爪で引き裂かれた痕があり、制服もゾンビが着ている衣服みたいになっていた。
そしてそれは、
レンシアが大鷲を操ってやったことだ、という噂が光の速さで学園内に広まってしまうのだった。
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