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真意と想念 3
「まあ…怪我は命に別状ないみたいやし
リウムが落ち込まないよう何か楽しい話でもしよ?」
平和主義のイヴィトの提案には賛同すべきかもしれない。
大怪我をして寝こけている枕元で辛気臭い話をされたら余計に悪化してしまいそうだ。
「もうすぐ夏休みやんか!みんなは何するん?」
イヴィトは早速明るい話題を無理矢理展開し始めた。
「俺は予定無しの予定だったが…世紀末預言の合宿に参加させられるハメになった」
「…何それ…怪しい宗教みたいな…」
「予想の先生の推薦でな…大預言者の集いというか、研究会というか。
学生枠は貴重らしいから一応顔を出せと…」
やれやれと言ったようにローラは肩を竦めているが、予想という果てしなくスピっているジャンルなのでイマイチ分かり辛いが
魔法使いの中では超エリート的な事なのだろう。
「俺は実家帰るかなー。弟達にも会いたいし
イオンも帰省するん?」
「いやぁ…結構帰るの大変だからなぁ…それにうちは帰っても誰も居ないだろうから…」
「そうなん?」
「親も夏は絶対2人で旅行行くからさ…」
「へー。仲良いんやね。一緒に行けばいいやん」
「邪魔するなって言われるもん」
イオンの両親であるリチャーデルクス公爵夫夫は大変なバカップルだった。
忙しい合間を縫って隙あらばデートをしていて、それに連れて行ってもらった試しはほとんどない。
仲が悪いよりはマシだったが、年齢イコールいない歴で生涯童貞のまま一生を終えてしまった井小田にとっては複雑な話だった。
物心ついた時から目の前でいちゃつかれていて、よくおかしくならなかったものだと自分でも自分を尊敬してしまうくらいだった。
「そういや夏休み前にあるパーティ?ってなんなの?」
イオンはずっと疑問に思っていた事を聞いてみた。
来賓も来るとか、噂では皇帝もくるとか聞いているが。
「あー、社交会みたいな感じやろか?
色んな企業の偉い人とかが見に来て成績優秀な生徒には声をかけたりとかもあるんやって」
「大半の生徒にとってはお疲れ様会だが
野心家にとっては出世チャンスだからな。
上位貴族はより優秀な人材を手に入れるために学生のうちから唾をつけとくんだ」
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