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真意と想念 5

結局リウムが目を覚ましたのは翌日の夕方頃だった。 怪我の所為か高熱を出してしまっていたが、話しかけると少し笑顔を見せてくれたし 医務員であるアニーフも、熱さえ下がれば明日にでも活動してよし、と言ってくれた。 「昨日のことあんまり覚えてないんだ…」 二人きりになるとリウムは熱で赤らんだ顔を不安げに曇らせながら呟いた。 「俺はその場にいなかったから…よく分からないけど、大鷲?に襲われてたって言ってたよ」 「うん…それは覚えてる…、で、先輩が来てくれたんだ…」 「先輩…ってレンシアさんのこと?」 リウムはこくりと頷いた。 一応同級生だったが、癒しの魔法で色々教わっているらしくどうやらリウムはレンシアを敬っているようだった。 「先輩はフレスベルグ達と喋っていたけど…内容は分からない… でもきっと、助けてくれたんだと思う…」 「そうだよね…俺もそう思うよ」 リウムの発言にはいくらかほっとしてしまって、イオンは頷きながらも彼の額の上に乗ったタオルを取り 水の張った洗面器の中にそれをつけて冷やし、水を絞って再び彼の額の上に置いてあげた。 随分とアナログな方法には冷えピタの偉大さを思い知ってしまう。 「みんなは何故かレンシアさんがリウムに意地悪してると思っているみたいだ」 リウムはその言葉には目を細め、苦しそうに息を吐き出した。 「分からないけど…でも…僕は先輩にはあんまりよく思われていないんじゃないかな…」 「……なんで?」 「フェディン先生が言ってたんだ…僕の数値は先輩の数値より上なんだって… 先輩は…癒しの魔法の数値の事で悩んでるみたいだった」 「だからって…こんな風に傷付ける人じゃないよ」 「うん……でも…、人間は愚かだからね…」 リウムは、ふ、と顔を歪めて微笑むと天井を見上げた。 その表情は今までの天真爛漫な彼とは少し違う気がしてイオンは眉根を寄せてしまう。

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