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温室の天使 2
「それでは各々、好きな生物と対話してみると良い。
友人になった生物と共に、私の元へ来るように」
教師の言葉を聞くや否や野心家の生徒達は飛び出していく。
しかし言葉が分かるからと言ってそう簡単に仲良くなれるはずもなく、
手当たり次第に動物に近付いては逃げられたりしている生徒も少なくない。
「こちらの意思を伝えるのはかなり難しい。
故にまずは敵意を見せない事、相手に恐怖を与えない事じゃぞ!」
老人先生の言葉は最もである。
近場はざわざわしているので、イオンは少しみんなから離れた場所で仲良くなれそうな生物を探すことにした。
温室内は小動物系が多いらしく鳥やリスのような小さな生き物が、温室内で葉を伸ばしている木々の隙間に隠れていたりする。
小動物は警戒心が強いのか目が合うとすぐに逃げていってしまう。
温室内は結構広いらしく、暫くうろうろしていると水の音が聞こえてきた。
そちらへ近付くと、木々や植木鉢に植った花に囲まれるように小さな噴水があった。
噴水の縁に腰掛けるようにして誰かが座っている。
ガラスの天井から注いでくる光で、キラキラと髪を光らせ
水面を見下ろす横顔はまるで女神のような美しさだった。
金色の頭上には小さな鳥が二羽ほど止まって寄り添っており、
彼の膝の上には猫のような生物が丸まって眠っていた。
彼の見つめる先には、水面から両生類のような生物が顔を出して、彼の指先に頭を触れられると長い舌をべろりと出している。
イオンは思わず押し黙ってその光景を眺めてしまった。
美術館のメインに飾ってある絵画のような、
まるでこの世のものとは思えないほどの麗しい景色に見惚れてしまったのだ。
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