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予感 1
半年間の授業も無事終わり、終業式とパーティを終えれば夏休みに突入する。
当然生徒の浮かれ度合いはマックスになっていて、
流石にイオンもその空気に当てられ少し愉快な気持ちになっていた。
というのも、レンシアの笑顔が頭から離れなくて
それを思い出す度に変に舞い上がってしまうのだ。
入学当初から彼は凛としていて、いつも真剣そうな顔をしていた。
微笑んでいることはあったが、それは面白くて笑っているわけではなくて相手を気遣って浮かべられているものだ。
それはそれで美しくはあるのだが、
あんな風に楽しそうにされるとなんだか妙な心地が沸き起こってきてしまう。
うわっと胸の中に感情が渦巻いて、にやけが止まらなくなって思わず暴れ出したくなるような。
オウムの言葉に賛同するのは悔しいが、
井小田時代を含めれば半世紀以上も恋愛赤ちゃんの童貞をやってきたイオンは当然免疫がないわけで
至近距離であんな顔面高クオリティな人間に笑顔を向けられればいくらなんでもおかしくなってしまう。
コンビニの店員さんの営業スマイルで好きなんだと勘違いするおじさんの気持ちが分かってしまい、
自分があり得ないほど拗らせている事を思い知って落ち込みもするのだが。
だけど、今とても複雑な状況の彼があんな風に表情を緩めてくれた事は素直に嬉しいと思えてならない。
自分なんかの力ではないとは思うけど、それでも。
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