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楯 3
「……なんで…」
レンシアが小さな声で呟いた。
堂々と歩くエルメーザの後ろをついてきているのはリウムの姿だった。
彼も身綺麗にしているものの、どこか浮かない顔をしている。
エルメーザは真っ直ぐにこちらに歩いてくると、固まっていたレンシアを見下ろした。
「レンシア、話がある…」
紅い瞳は冷たく、突き刺すように。
レンシアは震えながらも小さく頷いた。
「え、エルメーザくん」
イオンは思わず彼に声をかけてしまった。
彼はイオンに目を向けてくれる。
「言葉、選んであげて……」
やっと言えたのはそれだけだった。
別に未来が見えたわけではないが、
イオンにはエルメーザが考えている事がなんとなく予想できてしまって。
SNSの漫画の広告とかでよく見る展開だと茶化すことも出来ないくらい
重苦しい空気が、流れていて。
会場内が再び騒がしくなる。
重厚な圧を放つ人物が大股でこちらへとやってきた。
口髭を携え、かっちりとしたジャケットスタイルの初老の男性はエルメーザと同じ紅い瞳をしている。
「退け、エルメーザ」
「叔父上…」
「レンシアくん、話は色々と聞かせてもらったよ」
「え…?」
「君の素行について、だ。
成績優秀、“疎通”の魔法では1年生の数値としては歴代トップ。
食堂での事故の際は人命救助に率先したそうだな?」
エルメーザに叔父と呼ばれていた彼は、内容は褒めているのにまるで叱責するような口調だ。
レンシアは怯えたように低頭したまま何も言えなくなっている。
「だが、その事故も精霊と共謀した自作自演の疑いが出ている」
「は……?」
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