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楯 4

「更には幻獣生物とも繋がりリウムくんを襲わせたそうじゃないか。 彼が癒しの魔法を授かっていると知ってから随分と焦っていたようだね?」 「ま、待ってください…そのようなことは決して…!」 「勿論確証のない事だ。これだけで君を言及するつもりはない。 本当であれば黒魔術関与と幻獣生物への冒涜、 生徒2名への直接的な暴行及び故意の器物損壊で禁錮30年は硬いだろうが…」 男性の言葉は広間内に響き渡っている。 「だが、君の最も重い罪は、嘘をついていることだ」 彼の言葉にレンシアは両手を握り締めて俯いてしまった。 「…君はヴァガ伯爵に引き取られる際“大天使の生まれ変わり”だ、と言ったそうだね。 ヴァガ伯爵はそれを我々に伝え、エルメーザの婚約者に任命した。 勿論これも子どもの戯言を鵜呑みにした大人達にも責任がある。 君の癒しの魔法の数値はかなり高く、子どもの時点でこれなら成長すれば歴代最高にもなり得ると予想された。 だが成長した今の君よりもリウムくんは上回っている。 リウムくんに危害を加えたのも、 自分はそうではないと分かっていたから起こしたことではないのか?」 レンシアは何も言わないまま震えていたが、やがて小さくため息を溢した。 「……そうですね…俺は… …“大天使の生まれ変わり”ではないのかもしれません……」 掻き消えそうな声で呟かれた彼の言葉は広間内をざわつかせる。 「…でも、だからと言って他の種族や存在を使って人を傷付けるような事は決して致しません…」 男性はため息を溢すとレンシアの左腕を掴んだ。 そして彼の手の上に掌を翳すと、薄い赤色の光が溢れ始める。 「罪を疑われるような人間を皇室に招き入れるわけにはいかない。 ヴァガ・レンシア、君とエルメーザの婚約をこの場で破棄する。 証人は私、スカイ・ローザレックだ。」 男の宣言と共にレンシアの左手の薬指にあった指輪が、 ぱりんと音を立て粉々に砕け散った。

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