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部屋チェン! 1

最悪の気分で夏休みがスタートしてしまった。 帰省する学生達で朝から賑やかだったが、イオンは昨日の疲れもあって朝寝をしてしまった。 昼前くらいに起きると、リウムが床に座り込んで荷物を詰め込んでいる。 「……おはよ…リウム……」 目を擦りながら起き上がると、おはよう…、と彼は挨拶を返してくれたが、罰が悪そうな顔をしてこちらを見てくれない。 「…リウムも帰省するの…?」 「……僕…この部屋出ていくんだ…」 「え?そうなの?」 「………エルメーザと同じ部屋になった…」 リウムはトランクの蓋を閉じながら小さな声で呟いた。 寝起きのぼうっとした頭の中に昨日のパーティでの最悪の出来事が呼び起こされ、 イオンはため息を溢しながら頭を掻いた。 「…これでよかったの?リウム…」 「……っ…」 「誰かを好きになるのは自由だけど…あんな風に、傷付けてまで…」 「僕だってこんなの望んでないよ……っ」 リウムは俯いたまま泣き出しそうな声を出した。 「でも…しょうがないじゃん……僕の言うことなんて誰も聞きやしないんだから…っ」 彼は両手で顔を覆うと、ぐす、と鼻を啜りながら泣き出してしまった。 リウムは彼の容疑を否認しているし、別にレンシアを引き摺り下そうとしたわけではないのだろう。 エルメーザや皇帝家も、家を守るために仕方がないのかもしれないけど。 「ははは…っ、バカだよなぁ…みんな確証のないことで騒いで…騙されちゃってさ……」 リウムは顔を覆ったまま泣いているようだったが、何故か笑っている。 彼から不穏な気配を感じ取って、イオンは眉根を寄せた。 「…数字で簡単に信用して、素直でニコニコしていれば勝手に穢れのない存在だと思ってさ… だから人間なんてみんな嫌いなんだ… 自分が扱いやすくて見下せるような存在だったら誰でも良いんだ、結局自分に都合のいいような人間を選んで侍らせているだけさ…」 「リウム……?」 「先輩にはあんな所似合わないよ…あんな煌びやかで華やかで、嫌味なくらい豪華な場所はね… ……だからきっとこうなって正解だよ…僕は“使われた”だけ…」 リウムは涙を拭うと立ち上がり、トランクを抱え上げた。 最初に来た時に持っていたものだ。

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