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部屋チェン! 3
また、一人部屋に戻ってしまった。
リウムが居なくなってしまい、ポツンと取り残されたイオンはパジャマのまま暫くぼけっと部屋に立ち尽くしていた。
窓の外の空は晴れ渡っていて、全然心持ちとリンクしない。
リウムのことだけで言えば、彼はご栄転なさったので喜ぶべきだと思うけど
なんだか心がぽっかり穴が空いたようだ。
自分は何のためにここにいるんだっけ。
何をしようとしていたんだっけ。
結局自分は何も出来なかった。
勝手に世界が動いて、誰かが泣いている時でも何にも出来ない。
井小田の時と同じだ。
何かしたいと思っても何も出来なくて、結局諦めて流されるままに生きていって。
イオンは軽く頭を振って思考をぼやかすと、シャワーでも浴びようととぼとぼと部屋の中を移動した。
もうすっかり昼過ぎだ。
すると、コン、コン、と謎のリズムでドアがノックされる。
ローラかイヴィトが訪ねてくれたのだろうか、とイオンはドアに向かった。
「誰〜?」
せめて友達が来た時くらいは気分を上げようとわざとテンション高めにドアを開けると、
そこには黒いフードを目深く被った人物が立っていた。
足元には大きな鞄が置かれている。
一瞬ローラかと思ったが、俯いたまま一向に口を開かない人物にイオンはその顔を覗き込もうと身を屈めた。
「えっ…と…?」
しかし彼はますます俯いてしまっていて、一体何事かと思ってしまう。
暫く沈黙が続いた後に、黒フードの人物は少しだけ顔を上げた。
「あの……」
短く口を開いたその声は、少し掠れている。
ようやく顔が確認できると、フードの下には紫色の瞳があった。
「レンシア…さん…!?」
彼は気まずそうに再び床を見てしまって、どこかそわそわとしている。
わざわざ彼の方から尋ねてくるなんて、と不謹慎にも何故か嬉しさが沸き起こってきてしまう。
だけど昨日の件を思い出すと素直には喜べない。
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