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ピクニックデート 5
暫く校舎内を歩き学園の外に出ると、疎通の授業でも訪れた温室へとやってきていた。
流石にここには誰もいないのか静かだったけど、沢山の気配を感じる。
でもそれはとても穏やかで静かで、心地の良い気配だ。
イオンは温室内にある噴水の所までやってくると、近くに置いてあったベンチにレンシアを座らせた。
そして彼は持っていた籠を少し持ち上げて見せる。
「じゃーん。サンドイッチ作ってもらっちゃった」
そう言いながら籠の中から紙に包まれたサンドイッチを取り出してレンシアに一つ手渡してくれる。
彼は噴水の縁に腰を下ろすと、籠を脇に置いてサンドイッチの包みを開け始める。
「いただきまーす」
そう言いながら早速サンドイッチを齧り始める姿をレンシアはぼうっと眺めてしまった。
すると、どこからか大きな縞模様のオウムが飛んでくる。
『オッ!ドーテー!ヤキューシヨーゼ!』
「それはナカジマ…」
オウムと謎のやり取りをし始めるイオンはすっかり懐かれているようだ。
「……あの……、何故……」
「あー、ここなら誰もいないかなって。
ちょっとピクニックみたいで良くないですか?
折角のお休みだし」
『ナマイキニモデートカ!?』
「違うってば、へ、変なこと言わないでよ!」
オウムは彼の頭の上に止まりながらもケラケラと笑っている。
確かにここはすごく静かで落ち着けるけど、
別に彼一人なら食堂に行っても問題はないだろうに。
レンシアは、膝の上にサンドイッチを乗せて包みを開けるでもなくそれを見下ろした。
「俺…ストレスでやばい時、ネットの検索履歴が全部“ストレス 解消法”だったんすけど
大体書いてあること一緒なんですよね〜
寝るとか、お風呂にゆっくり浸かるとか、自然の多いところに行く、とか。
それができなくて病んどるっちゅーねんって話で…」
イオンはまた明るく喋り出した。
「…でも、すべき事に追われて時間がないって思ってたけど
全然そんなことなかったんすよねぇ。
全部やめて投げ出して、夕方までぐーすか寝たってよかった
…死ぬくらいなら、全然マシ、大したことはない…
仕事はまた見つければいいし、迷惑かけたら謝ればいい…
極論他者にはそれしかできないんすよ。
でも、死なないようにするのは自分しか気をつけてあげられないから…
“本当にすべき事”なんて、それくらいなんすよ…」
レンシアには彼の言っていることの半分もよく分からなくて俯いてしまう。
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