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ピクニックデート 6
「俺は…すべき事なんて…ずっとわからなかったのです…
自分で決められないとはいえ…身に余るような事を取り繕った結果です…」
今でもどうすべきだったのかはわからない。
もっと自分の無能さを主張すればよかっただろうか?
変に努力などせずに諦めていれば?
「確証のない事だと気付いていながら…、それでも寄せようとしたのは事実です…
それはすべき事では無かったのかもしれません…
無駄……ということですね……」
どれだけ身を削っても、努力をしても。
そもそも最初から見当違いだった。
しなくても良いことをした結果、多くの人を巻き込んでしまった。
エルメーザも苦しんだだろうし、目の前の彼だって傷付いただろう。
魔法なんて見つからず
孤児院で小さく小さく死んでいれば
こんな事にはならなかったかも知れない。
思い浮かぶ事は、真実めいて恐ろしい響きだった。
レンシアは唇を噛み締めながら、泣くのを我慢した。
「無駄なんかじゃないよ」
彼の声は泣きそうに震えていた。
「レンシアさんがしてきたことは…何も間違ってないし
無駄な事なんて一個もない…
あなたは自分の役割を全うしようとした、自分を犠牲にしてでも。
それは事実だし、尊い事だよ…」
どうして、そんな風に言ってくれるのだろう。
レンシアは泣くのを我慢しながら吐き出すように笑った。
「ありがとう…リチャーデルクスさん……あなたは本当に、お優しいのですね…」
彼はきっと誰に対してもそうなのだろう。
ただ純粋に目の前で苦しんでいる者に真っ直ぐに。
それが眩しくて堪らなくて、レンシアは顔を上げることが出来なかった。
「あなたに…早く出会いたかったなぁ……」
自分の魂が汚れてしまう前に、彼に出会えていたら
彼の優しさを少しでも教えてもらえたら、何か違っていただろうか。
もっと上手く円満にエルメーザとの婚約を破棄できたかもしれない。
だけどもう遅い、のだろう。
レンシアはそう思ってしまっていた。
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