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ともだち 2
イオンは、ふふ、と面白そうに笑っている。
「何言ってるの、もう友達でしょ」
「っ…イオンさん…」
レンシアは衝動的に彼に抱きついてしまった。
こんな自分でもそんな風に呼んでくれることが、嬉しくて。
「うわ、うわ……やわ、ぁ……」
『オマエホントウニトモダチトオモッテンノカ!?』
「お、思ってる、もちろん、これは友情のハグ…」
イオンは何かオウムと会話しているようだったが、ぎゅう、と抱きしめ返してくれた。
「ゆ、友情…これは友情……」
『セクハラヤロウ!!』
イオンはスパンとオウムに頭を叩かれていて、彼に抱きしめられながらレンシアはくすくすと笑ってしまった。
こんな風に楽しいと思えたことなんて一体何年振りなのだろう。
もしかすると初めて、なのかもしれない。
「ありがとう…イオンさん……」
もっと早くこうして友達になれていたら、学園生活はもっと楽しくなっていただろうか。
こんな事になると分かっていたら、もっと。
だけど後悔してももうどうにもならない。
最後に良い思い出が、素晴らしい思い出が出来た事を喜ぶべきなのだ。
「…俺が投獄されても…そう思ってくれていたらいいな……」
「めっちゃ既視感あること言ってる…
そんなことにならないように、何か考えましょうよ…」
「…でも…、俺にお金を出してくれる人なんて…」
「レンシアさんは普通に優秀だし、探せばすぐ見つかるんじゃ?」
「……皇帝家に泥を塗る寸前だったんですよ…
俺によくすれば…皇帝家に反すると思われる可能性が少なからずあると思います……」
「そんな…」
「それに…ハートン学園の学費はかなりの高額ですし…
庶民でなくても、子どもが数人いる貴族ですら全ての子どもを通わせるのには難儀していると聞きました。
養子や保護者として責任を取ってまで支援してくれる貴族自体少ないですし…」
「うーん……義務なのにそんな状況なのか…奨学金とかあればいいのに…」
イオンは床に座ったまま腕を組んで考え始めてしまった。
相変わらず、自分の事でもないのに真剣に考えてくれていてそれだけでレンシアは充分幸せに思えてしまう。
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