167 / 513
ロージーローズ 4
「……俺のために…動くなんて…
十家は皇帝家の直属といっても過言ではないのに…」
腹の中はどうであれ、貴族は皇帝家に付き従っている。
十家なんてその筆頭であるべきとされているのだ。
故にイオンとエルメーザが友達でもなんの違和感もないのだが、謀反だと疑われかけている存在にも手を貸すのは立場を危ぶまれかねないから。
「さぁな。だがあいつはちゃんと色々考えていると思うぞ
ああ見えて狡猾な男だからな…」
「うーん……」
「あいつの為に何かしたいならちょっと顔を洗って髪を濡らして鎖骨でも見せながら現れてみろ。
あのむっつりは尻尾振って喜ぶんじゃないか?実にキショいが」
ローラの言っている事も良く分からないが、レンシアは噴水に顔を突っ込んでからろくに顔すら洗っていなかったので
自分は相当汚かったのかなと恥ずかしくなってしまう。
「お、そうだ。とっておきの入浴剤をくれてやろう。
魔道具屋からノベルティとか言ってもらったんだ」
ローラはそう言いながら机の引き出しを開けてがちゃがちゃと漁っている。
そして香水瓶のようなものを取り出し、眼鏡をズラして瓶に貼られているラベルを眺め始める。
「エプソムソルトだな。ブラックローズの香り…
まあ香りはどうでも良いが、中身を全部入れて最低10分くらいはゆっくり浸かれ
自律神経も多少は良くなるだろ」
彼はそう言いながら瓶を投げて寄越すので、レンシアは慌ててそれをキャッチした。
綺麗な青色の瓶の中に白い砂のようなものが入っている。
ともだちにシェアしよう!

