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前世のスキル 3

「……あ…あの……」 レンシアは戸惑ったように肩から掛けたタオルで口元を覆い始めて、 可愛い!色っぽい!えちえち!同じ部屋最高!と脳内でお祭り騒ぎをしていたイオンは慌てて難しい顔をした。 「気持ち…よかったですか?」 「はい…気持ち…よかったです……」 頬を赤らめながら呟く彼に、この質問はあかんかったと天を仰いだ。 心臓がドキドキとうるさい。 鎮まれ!静粛に!と心の中の裁判長が怒鳴っている。 だけど彼はおずおずとこちらに近寄ってきて結構近い場所まで来られると、ふわ、と花のような香りが漂ってくる。 「やっぱり…何か手伝えることがあれば手伝います… 別に俺の事じゃなくても…イオンさんがやっている事なら…」 「い、いいいや大丈夫、大丈夫です…!」 「なにか俺に出来る事…ありませんか…?」 レンシアは顔を覗き込んできて、不安げに揺れている紫色の瞳といいその香りといいちょっと火照っている肌といい 色々とダメだった。 「あ……エト………」 整備不具合のロボットのようにイオンは固まってしまった。 人間だしそりゃ普通に性欲もあるし、好きな人がいた事だってあったが こんなに心臓がドカドカ騒がしいのは初めてだった。 だって、いつも遠くで見ているだけだったし こんなに近くで、こんなに綺麗な人にジロジロ顔を眺められている事なんてなかったから。 「ウワー、俺の安地が…遂に……」 「サンイヴンさん…あ、危ないですよ?」 二人の間に入ってきた声に、レンシアは窓の方に歩いていってしまって イオンは色々と助かり、はー…、と息を吐き出しながら胸を押さえた。 「ローラでいいよぉレンしぃ」 「ここ四階ですよ?落ちたらどうするんですか…」 「この程度じゃ死なん死なん」 「そういう問題じゃありません…!」 レンシアは窓の向こうから首だけ出しているローラと会話している。 見た目は真面目そうな優等生に見えるけど全然真面目じゃないローラは、本物の真面目な優等生に怒られている。

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