174 / 513
夏休みの活動 2
そんなこんなで、ハートン学園の寮に戻ってくる頃にはいつもどっぷりと日が暮れていて
帰ってくる度にバタンキューだった。
実にブラック企業時代を思い出す毎日だったが、あの頃よりも確実なやり甲斐を感じてしまっていた。
とはいえ肉体は流石に疲労してしまうのでヨボヨボと部屋に帰り着くと、
時間は深夜近かったのに部屋の中には灯りが点っていた。
「あ……イオンさん…」
机に向かっていたレンシアはイオンに気付くと立ち上がってこちらへと駆け寄ってきた。
彼がこの部屋に移動してきてもう二週間程が経とうとしている。
最初はボロボロに病んでいた彼も今は若干元気を取り戻してきているようだったが、
それでも相変わらずどこか消えてしまいそうな儚い微笑を浮かべて
いつでも少し申し訳なさそうに背中を丸めていた。
「おかえりなさい……」
彼はおずおずとイオンを見つめて呟いた。
でもそんな風に出迎えられるだけでイオンは今日一日頑張って良かったと思えてしまって、じわぁっと視界が滲んでしまう。
「ただいまぁぁ」
疲れて家に帰って誰かが居てくれるというのがこんなに幸せなのかと実感してしまう。
いつも井小田を出迎えてくれていたのは荒れ果てた部屋だったから。
「寄付金、順調に集まってきてるからきっと大丈夫ですよ、レンシアさん
これなら今在学中で困ってる人も何人か助けてあげられるかも」
「……なんと言っていいか…俺はあなたに何も返せなくて…」
「良いんですよ、何かしてもらいたくてやってるわけじゃないし。
それにほら、隙間産業見つけたと思って。学生時代に起業してたとか就職で強そうだし…」
困っている人がいるということは需要があるということで、需要さえあれば仕組みを作ってしまえば仕事になる。
別に起業家になるつもりはなかったが、とにかくやってみろとイオンは親にも言われていたのだ。
だけどレンシアは相当に申し訳なさそうな顔をしているので、
イオンは思わず彼の頭を撫でてしまった。
ともだちにシェアしよう!

