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夏休みの活動 5
一生独り身で生涯を終えてしまった為に独り言が多くなっているのは悲しい事であるが
そうやって好きな人に想いをちゃんと伝えた試しが無かったのも悲しい事だ。
この世界では別に変ではないのだろうけど、彼はとても傷付いているだろうから。
それにきっと彼は本意じゃなくても断れないはずだ。
仮にも十家という上位貴族で、彼の事を助けようとしているのも事実で。
レンシアの立場では、どう思っていたって拒否なんて出来るわけがないのだ。
現にそうやって彼は傷付けられてしまったのだから。
もう二度とそんな状態を彼に強いてはいけない。
だからイオンは、この気持ちは押し留めておこうと思っているのだった。
「…どうぞ」
レンシアは湯気の立ったコップを持って戻ってきて、机の上に置いてくれる。
「あ、ありがとうございます」
「お口に合いましたか…?」
「はい!めちゃくちゃ美味しいです!
すげー腹減ってたんで、嬉しいですホント…」
レンシアはちょっと中腰になってイオンの顔を覗き込んでいるので、なんだか顔が近くて無駄にドキドキしてしまう。
シンプルな部屋着だし、髪の毛もぼさっとしていて全然飾り気がないはずなのに
紫色の瞳は相変わらず二十万色使われているのかというくらい美しく輝いていて。
「…それなら、良かったです」
「はい……」
「じゃあ…俺は先に休みますね。
えーと…どうぞごゆるりと、おくつろぎください?」
「あれ?それ流行ってきてる?」
「ふふふ」
レンシアはくすくすと笑うと、自分のベッドの方へと歩いて行ってしまった。
押し留めておこうとは思っているけど、勝手に顔が熱くなって心臓が騒ぎ出すのはなかなかに制御できない。
イオンは落ち着かせる為にパスタに真剣に向き合うことにした。
笑っていてくれたら、それは本当のことだ。
好きな人には心の底から、笑っていて欲しい。
それを少しでも見せてくれたら、きっと、走馬灯はどんどん豊かになっていくはずだから。
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