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羊たちと 4
「ま、まさかレンシア様がいらっしゃるなんて思いもしませんで…!」
「俺がいなくても勝手にこんなことをしてはいけませんよ」
「…で、ですよね……」
「どうして金羊の毛が必要なのですか?」
「あ…あのそれは…そのぉ…自分は…魔道具を作っておりまして…」
「魔道具?」
「それでその……野生の金羊なんて滅多にいませんし…
材料を買うお金もなく……そういえば飼育小屋にいたなと……」
生徒は歯切れ悪く説明したが、レンシアがため息を溢すと
再び悲鳴を上げながら地面に額を擦り付けた。
「こ、この事はどうかご内密に…っ!
学園にバレて退学にでもなったら…自分は内臓を全部売り飛ばされて…
い、いや、レンシア様に関係のない事とは存じてますが!
ですが!私刑なら受けますから!レンシア様の鞭打ちだったらワンチャン耐えられる事山の如し!」
「落ち着いてください…必要なら必要とちゃんとお話しすればよいのですよ」
「え……?」
生徒は恐々と顔をあげる。
眼鏡のレンズは涙で濡れているし、額には土が付いていた。
「俺も一緒に説明しますから、用務員さんに話してみましょう?」
レンシアは彼の土を払ってあげながら首を傾けた。
「な……なんと慈悲深く美しい……まさに天使……」
生徒は余計に泣き始めてしまって、戸惑ってしまうレンシアだった。
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