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苦学生な先輩 1
ヴェネッタと名乗った二年生の生徒と共に用務員に事情を話すと、
そろそろ毛刈りをしようと思っていた所だったし、手伝ってくれるなら少し持って行っても良いよ、と言ってくれた。
という事でレンシアは彼と共に金羊の毛刈りを行うこととなってしまった。
毛刈りと言っても普通の羊のように丸裸にするというよりは、
大きな鋏で短く毛を切り取るような感じでヘアカットに近いかもしれない。
金羊は普通の羊よりも手間がかかる生き物で、定期的にこうしてカットしてあげないといけないのだ。
暑くなってくる時期は特に、毛を伸ばしっぱなしだと熱がこもってしまい体調を崩してしまったり皮膚病になったりするらしい。
「はい、切りますよー」
レンシアは近くにいた羊に声をかけたつもりが、他の羊も勝手に集まってきて列を作り始める。
「す…すごいレンシア様…金羊を操っていらっしゃる…!?」
「操るだなんて…彼らがおりこうさんなだけですよ…
それに暑かったのでしょうね。早く切って欲しいみたい」
我先にとやってくる羊達に、順番ですよ、と言いながら鋏で金色の毛をカットしていく。
隣でヴェネッタも苦戦しながら作業に取り掛かり始めた。
「…ヴェネッタさんはどうして魔道具を?」
「うう…お、お恥ずかしい話なのですが……
ウチは厳しい家庭というか…あまりお金が無いというか…ここの学費はとんでもなく高額ですし……そ…それで……」
「まさか、魔道具を売って学費を?」
「……………はい…」
ヴェネッタは小さな声で返事をしている。
「が、学園内での商売は禁止だと分かっています…!
でもメルカるのも限度がありまして…っ!」
言い訳しているようで自らボロを出す彼に、
用務員に言ったら取り上げられそうなので黙っておこうと思うレンシアだった。
「そっか…でも、偉いですね…自分でそうやって工面しているのは…」
伯爵からの支援を受けられず、諦めようとしていた自分には耳が痛い話だった。
イオンといい彼といい、無いなら無いでどうにかしようとしていて。
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