183 / 513
苦学生な先輩 2
「い、いえいえ!偉いだなんて滅相もございません!
レンシア様に比べれば自分なんか…!
ていうか寧ろレンシア様ありきで頑張れているというか?心の支えがレンシア様だからというか?」
「様なんてつけないでください…俺はもうなんでも無いのですから…」
「な…何を言ってるんですか!あなたこそが“大天使の生まれ変わり”なんですよ!」
「いや…だからそれは……」
彼はあの場にいなかったのか、もしくはまだ噂が届いていないのだろうか。
確かにたかが庶民が次期皇帝の婚約者だの“大天使の生まれ変わり”だのというのは気に入らないと反感を持つ人間がいる一方で
彼のように純粋に慕ってくれる人間もいるのだ。
寧ろこんな風に信じてくれている人間に対しての方が罪悪感が大きくて、レンシアは俯く。
「俺は……本当は“大天使の生まれ変わり”ではないのです…
…信じて、期待してくださっていたのに…申し訳ございません……」
震える声で謝ると、二人の間に静かな空気が流れてしまう。
羊だけが早くしろと急かしてくる。
「いやいやいや、じ、自分はそれ信じてませんから…!」
「え…?」
「レンシア様こそが“大天使の生まれ変わり”です!間違い無いのです!
あ、じ、自分実は“B.E.R”の会員でして…っ、実は制服の内側にも会員証を仕込んでいるんです…!えへへ!」
彼はそういいながらもローブの下のジャケットの内側を見せてくれる。
金色の糸で刺繍された翼のようなロゴに“B.E.R”と書かれているワッペンのようなものが貼り付けられていた。
「…なんです?それ……」
「えー!?!ご存知ない!?“B.E.R”は“大天使の生まれ変わり”様の信奉者達のサークルですよ!
会員数は数百名にも上り、宗教普及会でも百五十年壁サーとして君臨しているで有名なんですよ!?」
「宗教普及会……?壁サー…?」
「じ、実はですね、我が“B.E.R”の予言師が二十年前に発行した“予言の光 第6666号”でレンシア様の誕生が予言されていたんですよ!
前回の“大天使の生まれ変わり”誕生から百年以上過ぎて…ついに!ってことで!もう激アツイベントで!」
興奮して喋っているヴェネッタに、レンシアはついぽかんとしてしまう。
彼は金羊の毛を切りながらも鼻息荒く語っている。
ともだちにシェアしよう!

