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金羊の糸 1
結局全ての羊の毛刈りが終わる頃には夕暮れ時になってしまった。
毛は大量に収穫できたが、ヴェネッタが必要な分だけ貰って後は彼らのご飯代の為に出荷される事になるだろう。
手伝いの駄賃として、レンシアも少しだけ金羊の毛を貰った。
綿毛みたいにふわふわの金色の毛は、夕暮れ時に透かすととても綺麗だった。
「いやー、ほ、本当ありがとうございました…!」
「ええ。もう勝手に毟ったりしてはいけませんよ?」
「ハイッ!肝に銘じます!!」
ヴェネッタはまた地面に這い蹲る勢いで頭を下げている。
毛を毟られた羊にも謝ってもらって、許してもらえたしもう問題はないだろう。
「こ、公式はこう言ってたと報告しておきますね…!
我ら“B.E.R”はいつでもレンシア様を見守らせて頂いておりますから!アッ!でも我々の存在は本当に気にしなくて構いませんので!!認知されたらそれはそれで困るんで!」
暴動を起こされたら少し困るので、手荒な真似はやめるよう伝えてもらえそうだが
彼は意味不明なことを言っていて、レンシアは苦笑してしまう。
だけどとりあえず味方では居てくれるのだろう。
手を振りながら去っていくヴェネッタを見送り、レンシアは掌の中の金色の毛を再び見下ろした。
「俺も…何か作ってみようかな……?」
魔道具なんて作った事は一度も無かったが、金羊の毛は闇を祓うお守りのような意味合いでも使われると聞いた事がある。
綺麗に紡いで糸にしたら刺繍くらいはできるかもしれない。
上手に出来たら彼に渡してみようか、とそんな事を考えてしまい、何故か頬が熱くなってしまう。
「お…贈り物なんてされたら困る…よね…」
自分の為に一生懸命動いてもらってるからって、特別だなんて思ってはいけないのだ。
烏滸がましい自分に嫌気が差してしまって、レンシアは金羊達のいる囲いの柵に近付いてさっぱりと散髪を終えている彼らを眺めた。
毛が短くなった所為で随分とほっそりして見えるが、それでも寄り添っている姿は可愛らしかった。
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