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金羊の糸 2
「あ、レンシアさん!ここに居たんですね!」
誰かがこちらへ走ってきて、その姿が視界に入るとレンシアは慌てて金羊の毛をポケットに突っ込んだ。
手を振りながら駆け寄ってきたのは、背の高い生徒で
脱いだジャケットを片手にシャツも何故か腕捲りをしている。
「…イオンさん…」
「もしかして動物のお世話を手伝ってたんですか?」
レンシアは飼育作業を手伝おうと思って汚れてもいいシャツとパンツと長靴姿という最底辺の格好をしていた。
羊は散髪をしてやった癖に、自分は最近髪を切っていなくて適当に縛っていたのでレンシアは慌てて髪を解いた。
「す…すみません……」
「え?なんで謝るんですか?」
「見苦しいですよね…こんな格好で…」
今更取り繕ったってしょうがないのだが、やっぱり恥ずかしくなってしまう。
顔に土でもついていなかっただろうかとレンシアは咄嗟に頬を拭った。
「…パーティの時のバチギメも好きでしたけど…
今の感じも全然いいと思いますよ?
髪結んでるのも、可愛いと思うし…大ありというか寧ろ好きというか…」
思わず彼の顔を凝視してしまう。
好き?可愛い?
そんな事は今までに言われた試しがなくて。
「あれ?なんかいっぱいついてる…」
イオンはそう言いながらもレンシアの服に手を伸ばしてきて、何かを摘み上げた。
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