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呼ぶ声 2

「ありがとうございます…」 「初めて来た所ってきょろきょろしちゃうよねー 俺も入学したての時そうだったもん」 「わかるー。俺もずっと地図持ってうろうろしとった 絶対迷いたくないから」 「イヴィトはしっかりさんだもんなぁ」 「方向音痴どもめ」 前を歩く二人も振り返って会話に入ってくれて、なんだかこうやってどうでもいい話をみんなでするのも初めてな気がしてレンシアは嬉しく感じてしまう。 無駄なことはするなとあらゆる大人に口酸っぱく言われてきたけど。 今は無駄を享受したいような、そんな気持ちだった。 そんな幸せな心地を一瞬で不穏に変える感覚が後ろから入ってきた。 「…ねえあれってもしかして……」 「新聞に載ってた……」 ひそひそと話している声。 どこから見られているのか分からなかったが、明らかにこちらに向けられているであろう視線を感じてレンシアは思わず俯く。 誰も自分の事など気にしていないだろうと思っているとはいえ、 それは“レンシア”の事であり、“元次期皇帝の婚約者”や“大天使の生まれ変わりだと嘘をついた人間”という事情には人目がついて回ってしまう。 一応顔を少しでも隠そうと伊達眼鏡をかけてきてみたものの、あまりこの国にはいない金色の髪はやっぱり目立ってしまうようで。 「…こんな所にそんな恥知らずがいるわけないだろ…」 「でも確かに…」 「どこどこ?」 感じたくないのに感じてしまう気配。 自分に向けられる悪意。 レンシアが逃げ出したくなっていると、突然肩にイオンの手が触れて引き寄せられる。 驚き隣を見ると、凄く近くにイオンの顔があった。 「こっち、俺らの間に入りな」 彼は短くそう言うと反対側にローラが来てくれた。 「全く有名になるとプライベートは滅するらしいな」 「帽子も必要やったなーどっかに売ってへんかな…」 ローラは呆れたように腕を組んでいて、イヴィトは地図を調べ始める。 「す、すみません…俺の所為で…」 「レンシーは何も悪くないやろー」 「そうだぞ。ゴシップしか楽しみがない消費者が悪いんだ あんなのに負けることはない。堂々としていればいい」 「騒ぎになったら迷惑かかるでしょ」 不満そうなローラにイオンは真っ当なことを言っている。

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