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呼ぶ声 3

罪悪感が湧き起こるものの、いつでも無条件に守ってくれる彼らに対して感謝の方が大きくなってしまって レンシアは服の裾を握り締めながら小さく頭を下げた。 「……ありがとう…ございます、ま、守ってくださって…」 どこから槍が飛んできても誰も守ってくれなかった。 寧ろエルメーザを守るために前に出ろとさえ言われていた。 それなのに今はこんな風に囲んで守ってくれて。 言葉よりもずっとたくさんの感情があったけど、レンシアはうまく言い表せないまま彼らを見つめてしまうのだった。 「いいよー全然」 「気にするな」 彼らは何故かにこにこしていて、それが当然かのように振る舞っている。 隣を見るとイオンもいつも通りに優しく微笑んで 「いつでもどーぞ」 と言ってくれる。 ああ、いいなぁ。ここにいていいのかな。 ここにいたいな。 そんな気持ちが湧き起こってくる。 俺もみんなを守れたらいいな。 それは、自然に生まれた感情だった。 義務でもなく、宿命でもなく、ただただそうしたいと思えた。 「しかしどうしよか…ちょっと一旦人気のないとこに離れる?」 「そうだねぇ……」 相談し始める三人だったが、突然不思議な声が辺りに響き渡った。 「うわ、なんだ!?」 「急に鳴き出した…!」 すると周りにいた人々も騒ぎ出し、注目はそちらの方へと向いてしまう。 四人は顔を見合わせて人集りが出来ている方へと走って行った。 そこは目指していた“特別展示”の檻だった。 檻といっても大きめの建物が立っていて、柵の向こうには池のような水場が作られ二匹の生物がそこに入っていた。 「離れてください!危ないですから!」 生物は空に向かって咆哮しており、柵の前で従業員らしき男が声を張り上げている。 「ドラゴンが吠えるなんて珍しいな…」 ローラがぼそりと呟く。 それを体現するように人々は好奇の目でドラゴンを見ようとして檻の前は大渋滞になっていた。

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