216 / 513
選べないこと 1
レンシアさんは、やっぱり不思議な人だ。
彼を知れば知るほどに、そんな気がしてしまうイオンだった。
魔法使いなんて全員不思議で当然なのだろうけど。
なんだか彼は、目が離せなくて仕方がない。
学園へ戻ってきた頃にはすっかりと日が暮れていた。
ドラゴン保存協会はまるで役所のような真面目な施設で、レンシアが持ち込んだドラゴンの卵と思しき石一つを巡ってあちこちたらい回しにされ
様々な手続きが落ち着いた頃には外は真っ暗になっていた。
ローラとイヴィトは早々に飽きて途中でどこかに行ってしまうし、イオンだけずっと彼に付き合って
一緒にたらい回しにされ長い待ち時間を共に過ごしていた。
というのも、レンシアはずっと不安げな顔をしていたし、色々とナイーブな問題についても質問されていたので放っておくわけにはいかなかったのだ。
ようやく自分達の部屋に戻ってくると、流石に疲れを思い出してため息が溢れてしまう。
レンシアは自分のベッドの上に腰を下ろし、両手の中にある石を見つめている。
「許可…貰えてよかったですね」
色々あったが、最終的には所持していてもいいという許可をレンシアは貰う事ができた。
あらゆる大人に話をしたので混乱しそうだったが、結局その石がドラゴンの卵かどうかは分からないという事だった。
そもそもドラゴンと口を聞ける魔法使いは数少ないし、
ドラゴンが自ら話しかけてくるなんてほとんど記録にない事だという。
レンシアは婚約破棄によっての精神病すら疑われる始末だった。
直接言われたわけではないが、
どうも協会はレンシアのことをただの石ころをドラゴンの卵だと思い込んでいる可哀想な男と結論付けたようだ。
「俺は…やっぱりどこかおかしいのでしょうか…」
人混みが多い所に行ったし、奇異の目にも晒されそうになったし、最後は一生終わらないかと思うくらいの手続き地獄で彼は相当疲れているのだろう。
病んでいる発言をし始めたので、イオンは苦笑しながらも彼に近付いていった。
ともだちにシェアしよう!

