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選べないこと 2
「…レンシアさんは、レンシアさんだよ」
レンシアはこちらを見上げると、どこか泣きそうな目をしている。
「……イオンさん…気を、引きたかったわけではなくて……」
「色々言われたことは、気にすることないですよ」
妄言だと疑われていた彼はやっぱり少々傷付いたのかもしれない。
レンシアが今日かけていた伊達眼鏡は、おしゃれではなくて顔を隠すためのもので。
学園という狭いコミュニティの中だけでなく、彼が有名人である事は変わりない。
あの件で話題になっていた事もあり、今は余計に、だ。
「…自分では大人しくしているつもりでも…、俺の周りで勝手にいろんなことが起こって…」
彼は俯きながらぼそぼそと呟いている。
自分で選んだ事ではないのに、という感覚はイオンも、いや井小田も感じていた事だったから。
「…きっと…俺はそういう運命なのでしょうね…」
「レンシアさん…」
「………なんだかもう……」
なんと声をかけていいか分からず立ち尽くしてしまうと、レンシアはこちらを見上げて微笑んだ。
「面倒になってきました…」
「……はい…?」
「落ち込むのも考えるのもなんだか飽きてきたのです…」
レンシアはそう言いながら立ち上がると、とことこと窓の方に向かって歩き出した。
そして窓を開けている。
「頭を悩ますものを全部無くした方が早い気がしてきました。」
そう言って石を放り投げようとしているので、イオンは慌てて彼を羽交締めにした。
「ちょちょちょ待った待った!一応生き物なんですよね!?数億の価値があるかもしれない!?」
「そんなの俺の思い過ごしでただの石かもしれないですし…!」
「にしてもやり過ぎですって!捨てなくてもいいって!!」
暫く格闘していた二人だったが、イオンはどうにか彼を窓から引き剥がしてベッドに放り投げ
ついでに石を取り上げた。
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