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選べないこと 4
別にただお礼を言われただけなのに、どうしてこう惚けてしまうのだろう、とイオンは自分はこんなにもダメなやつだっただろうかと呆れてしまう。
もちろん向き合っていたいとは思っているけど、大した事は出来ていない気がする。
自分はただ、近くにいる事しか出来ないから。
「はぁ……」
何故かため息が溢されてしまうと、開きっぱなしだった窓から風が吹き込んでくる。
閉めなければ、と思いながら立ち上がり窓へと近付いた。
すると誰かが上から降ってくる。
「おい!イオン!」
「…っうわ、びっくりした…」
思わず飛び退くと、ローラが窓の向こうから睨んでくる。
どうやら上の階から命綱的なロープでぶら下がっているらしい。
「…これを見ろ、今日の新聞だ…」
「新聞?」
ローラに差し出された新聞を受け取って眺めると、一つの記事がでかでかと枠を取っていた。
見出しにはエルメーザの名前があり、思わず目を見開く。
「エルメーザ皇太子…二度目の婚約…?」
「どうやらリウムと婚約したらしい」
「ま…まじかぁ……」
リウムはエルメーザと同じ部屋に移動していたし、皇帝ルートに行ってしまったのでいずれはこうなると思っていたのだが
まだレンシアが婚約破棄されてから1ヶ月が経つか経たないかというのに、少々早過ぎではないだろうかとイオンは眉根を寄せた。
「レンしぃの耳に入るのも時間の問題だろうが…
あの3人が顔を合わせると凄まじい空気になるだろうな」
「うーん…そう…かもね…でも学校が始まったら絶対会う事にはなるよね…」
ただでさえギリギリで生きていそうなレンシアをあまり2人に会わせたくなかったが、同じ学年だしそういうわけにもいかないだろう。
「出来るだけフォローはするつもりだけど…」
イオンが呟くと、ローラは窓枠に肘を付いてこちらを見上げてくる。
「お前だって告ってもいいと思うぞ?」
「は…、はぁ……?」
「あいつらが先にやってるんだからな。やり返せ」
「いやそんな…、どういう理屈…?」
喧嘩みたいに言っているローラにイオンは苦笑する。
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