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踏み台 3
すると、少し先によく知った背中が見える。
他の生徒よりも頭一つ抜け出ている背の高い生徒。
レンシアは思わずその背中に駆け寄ってしまうと、辿り着く前に彼が振り返ってくれた。
「あ、レンシアさん」
そうやって微笑みかけてくる彼の顔をレンシアは眉根を寄せながら見上げた。
「………なんか、怒ってます…?」
俺なんかしちゃいましたかね…、と苦笑しているイオンをレンシアは睨んだ。
「イオンさん。俺は今すごくイライラしています」
「…そう…みたいですね……」
こんな事を言っても彼は怒るでもなく、
なんでかなー…?と控えめに様子を伺ってくれる。
比べるべきではない。
そんなことは重々承知しているけど。
「……やっとわかりました」
「へ…?」
「俺はずっと自分が悪いと思っていた…、力がないこと…望まれているような人間にはなれないこと
……でも、そうじゃなかった。
自分がおかしいのではなく、ただ望んでいない場所にいただけなのです
人間は星の数ほどいるというのに!」
「はぁ……」
イオンは不思議そうに首を傾けているが、レンシアは自分の中で勝手に納得して彼に微笑みを向けた。
「ふふ。ありがとうイオンさん」
「どう…いたしまして?」
彼は戸惑いながらもへにゃっと笑ってくれて、なんだか胸がいっぱいになってしまう。
さっきまであんなにイライラしていたのに、それがすうっと溶けて消えて行って
別の感情で満たされていくみたいに。
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