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古典刺繍 2
「えへへ…俺は今世界一の幸せ者かもしんない…」
イオンはその笑みをイヴィトへと向ける。
「なんで?」
「実はこれさーレンシアさんから貰っちゃったんだ…
俺プレゼントとか貰った事ないから、嬉しすぎて正直舞い上がっておる」
「イオンって一応十家…なんよな……?」
陰キャすぎる発言にイヴィトは若干心配そうにしている。
だけど基本的に良い奴なイヴィトはハンカチを見せてあげると、綺麗やね、と褒めてくれる。
「刺繍…か、金羊の糸みたいやなぁこれ」
「金羊?」
「ほら、飼育小屋にもおるやろ?金色の毛の羊」
イヴィトの言葉に記憶を遡ると、レンシアが毛刈りを手伝ったみたいなことを言っていたことを思い出す。
「金羊の毛は結構高級品やったと思うけど…」
「え…や、やっぱりハイブランドなのかな…」
ハンカチとはいえ結構良いお値段がするのではないだろうか。
気を遣わせてしまったかもしれないと少し不安になってしまう。
「うーん…多分やけど自分で刺繍したんとちゃう?
魔法っぽいし…なんかの式やろか…」
「え?」
「…古典魔法は苦手だからよく分からんなぁ…
ヴェネッタ先輩なら知ってるかもかなぁ……」
イヴィトは刺繍を眺めながら首を捻っている。
自分で刺繍をするという概念がそもそもないイオンは、心臓が騒ぎ出してしまう。
そういえば、レンシアは夜なべして机に向かっていたようだったけど
勉強をしている感じではなかった。
バレンタインのチョコレートを手作りするとかは噂で聞いたことはあるが、
ハンカチに刺繍はその3ランクくらい上なのではと勝手に想像してしまう。
そんなものをレンシアが自分に?と思うとイオンの頭はますますまともな思考が出来なくなってしまう。
「そ……それって……実質結婚なのでは……?」
「何言っとんの……?怖……」
拗らせすぎてやばい思考になっているイオンにイヴィトは、やめな?と冷静に怒ってくれるのだった。
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