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引け目 1
イオンとレンシアの二人はテーブルを片付けて、医務室へと向かった。
リウムはまたしても包帯ぐるぐる巻きにされ、背中を丸めてベッドの端っこに座っていた。
「全然平気そうにしてるけど、びっくりするくらいの大火傷なんだよねぇ」
と医務員はどこか呆れたように苦笑しながら、包帯の替えを取りに行くと言って出ていってしまった。
置いてある分は使い切ってしまったのだろう。
「ごめんね…イオンくん…先輩……」
「それはいいけど…流石にこれは大犯罪だと思うけどな…」
「ええ。犯人に心当たりはないですか?」
「さぁね…別に誰でもいいよ…どうせみんな僕のこと嫌いだろうし…」
リウムはぼそぼそと呟きながら泣きそうに目を細めている。
彼は主人公補正で人気者だったはずだが、とイオンは不思議に思ってしまう。
壮絶なイジメもまた主人公あるある、なのかもしれないけど。
「ローラ達は?」
「先生に呼ばれていった…事情説明してくるって…」
さすがにこれは学園側も黙っているわけにはいかないだろう。
だけどイオンは犯人を断罪する事よりも、リウムの心の方が心配だった。
「リウム…俺達になんでも相談してよ…どうにか出来ないか考えるからさ」
彼がこんな実害を招くような悪意を向けられているなんて知らなかったのだ。
難しい立場になっても大切な友達だし、こんな大怪我をして良い訳がなくて。
「……どうして……?」
「どうしてって…友達じゃん?
友達が困ってたら助けるのは当たり前でしょ」
イオンが微笑むと、リウムはちらりとレンシアを見た。
その不安げな表情にレンシアは腰に手を当て彼を睨み下ろしている。
「なんですか?」
その圧のあるはっきりとした声にリウムは、う…、とビクついて俯いてしまった。
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