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引け目 2

「…だってさ…イオンくんは…せ…先輩のこと…」 ぼそぼそとよからぬ事を言い出しそうなリウムにイオンは慌てて、いやいや!と叫んだ。 「と、友達は友達じゃん!!?」 特に言葉が思い付かず変なことを言ってしまったが、レンシアは小さく息を吐き出した。 「別に俺はあなたのことどーとも思っていないですよ。 あなたに何かが奪われたなんて、それこそ1ミリも」 「……」 「あなたは何に引け目を感じているのですか? 次期皇帝の婚約者の座を奪い取った事? それとも“大天使の生まれ変わり”を?それとも俺が伯爵から離縁されたことでしょうか?」 リウムは罰が悪そうに俯いている。 「…俺にとっては全部取るに足らないことですよ。 そんなのはただ誰かが勝手に騒いで貼り付けた事に過ぎない。 何者でなくたって俺は俺ですから。あなたもそのはずです そうですよね?イオンさん」 「え…俺……?」 急に話を振られてイオンは苦笑してしまう。 でも確かにそれはその通りで、別に世間で言われるものじゃなくたってレンシアはレンシアで、 堂々としている彼はついぼけっと見てしまうくらい美しいから。 「…うん。何があっても、リウム自体を否定する事にはならないと思う…」 「……本当に…?さっきあんなに、怒ってたのに…?」 「うーん…罪を憎んで人を憎まずというか… でもレンシアさんがこう言ってるのに俺はこれ以上怒れないよ… 人を傷付けた事には変わりないからその事は受け止めるべきだと俺は思ってるけどね。 ただ…この人がなんかすごい人だっただけというか…」 「?なんの話ですか」 「い、イエッ!こっちの話で!」 勝手に怒ってしまった事がやっぱりどんどん恥ずかしくなってきて、イオンはレンシアには知られたくなさすぎて慌てて誤魔化すのだった。

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