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引け目 3

リウムは俯いたまま押し黙っていたが、やがて怖々と顔を上げてくる。 「ありがとう……僕のことまだ、そんな風に言ってくれて… …でも、違うんだよね…」 「違う…って何が?」 「……僕……は、さぁ……」 彼が何か言いかけると同時に、医務室のドアが勢いよく開いた。 「リウム!」 それと同時に駆け込んできたのは、エルメーザだった。 彼はずかずかと入ってきて、リウムの姿を捉えるとみるみるうちに怒りのオーラを纏い始める。 「…エルメーザ……」 「また……お前がやったのか……?」 「違うって…!先輩は…」 リウムは彼を止めようとして立ち上がりかけるが、エルメーザは目を三角にしてレンシアを睨み付けた。 空気が燃えていくかのような怒りを感じてイオンも思わず息を呑んでしまう。 「お前には、すまない事をしたと思っていた…、叔父上がしたこととは言えあんな公衆の面前で恥をかかせるような真似…」 エルメーザは両手を握りしめて震えていたが、レンシアは腕を組んだまま真顔で彼を見つめている。 「っ、だが!やっていい事と悪い事がある……!」 「…俺ではない」 「貴様…!」 彼はレンシアの首根を掴んだが、レンシアは表情を変えず彼を睨んでいる。 「ちょ、エルメーザくん落ち着いて…! レンシアさんなわけないじゃん…!」 イオンは慌てて二人を引き剥がそうとしたが、邪魔をするな、とエルメーザに突き飛ばされてしまう。 「いった…!」 イオンがベッドに腰をぶつけて床に頽れると、炎のように燃え盛っていた部屋の空気が ピシリと凍り付いたように静かになった。 「……聡明なあなたが、怒りで我を忘れるくらいジョルシヒンさんの事を愛しているのは結構。 ですが怒りの矛先を向ける場所を見失ってはなりません」 レンシアの声は静かで冷たく、鋭かった。

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