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眠りの淵で 4

罪悪感に包まれて、気絶するように眠った所為で 妙に生々しくてリアルで、 それでもその世界が現実であってはいけないと思える夢を見た。 孤児院にいて、見慣れた窮屈な部屋の中にいると 部屋の隅の暗闇からじっとりとした視線を感じるのだ。 その気配は蹲って息を潜めているようで、 だけれどうるさいほど混沌とした気配を漂わせていて それと目を合わせてはいけないと直感している。 『イイナァ…』 仄暗く、不気味で、憎悪のような。 羨望を口にする声が絡み付いてくる。 『イイナァ…イイナァ…ホシイナァ……』 その声を聞いてはいけない。 応えてもいけない。 誰に教えられなくても本能でそう解る。 怖くて叫び出したい。 いつか飲み込まれてしまいそうな闇。 『……イイナァ……』 ふ、とその声が泣いているように聞こえて顔を上げる。 ぎゅっと閉じていた目を恐々と開いて、握り締めていた掌を解いた。 怖くて聞かないようにしていた声に恐る恐る耳を傾ける。 『ナニモ…モッテナイ……ナニモナイ…』 声、はとても悲しそうに呟いている。 闇はどこにでも存在していて、誰からも目を背けられている。 人は光へと目を向けて、常にそれを追い求めているから。 『イイナァ……』 その悲痛な声に居た堪れなくなって、振り返った。 部屋の隅に、真っ黒な何かが蹲っていて 膝を抱えて泣いているようだった。

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