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温度 1

レンシアはその日はほとんど授業をサボって図書室で本を読み耽っていた。 精霊や降霊についての本だ。 精霊と口を聞けば付き纏われる事、精霊に三回出会うと魔法を食べられてしまう事。 そう言った迷信のような事ばかり記載してあった。 授業もまだ終わっていなかったが、レンシアは早々に寮の部屋に戻って 相変わらずぴくりとも動かないイオンを眺めていた。 夕方頃、医務員であるアニーフが部屋へとやってきた。 「やぁ。おサボりさん」 イオンの様子を見に来たらしい彼はそう言って呆れたように肩を竦める。 アニーフは一通り診察をした後、やれやれと言ったようにため息を溢した。 「…逆になっちゃったねぇ」 ベッドの脇でイオンを見つめていたレンシアに、彼はポツリと呟く。 「逆…?」 「君が魔力切れで倒れた時、彼もそうしていたんだよぉ」 アニーフは呑気に言いながらも捲っていた布団を元に戻してやっている。 癒しの魔法を使った日のことだと思い出し、レンシアは目を細めた。 あの日のことはよく覚えていなかったが、確かイオンは守ってくれたような気がする。 彼はいつでも、守ってくれていた。 何が相手だって一歩前に出て。 レンシアはまた泣きそうになったが、必死に耐えた。 「…アニーフ先生…イオンさんは……」 「うぅん…これがなんとも言えんけどねぇ…」 彼は小さく唸りながらも腕を組んだ。

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