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温度 2
「……温度を、食べられたかもねぇ…」
「温度…ですか……」
「精霊だね。もう一人の子は“二回目”みたいだったしぃ…」
「もう一人って…ジョルシヒンさんが…?」
レンシアは自分で言いながらもハッとなった。
そういえばリウムは、熱湯をかけられていたのに全然騒いでいなかった、と思い出したからだ。
温度を食べられる、というのは、そういう事なのだろうか。
次は、言葉。最後は、心……。
「明日まで目覚めなかったら大きめの病院に転移かなぁ
本当に精霊を呼んでいたとしたら隔離しなきゃいけないしぃ」
「隔離…?」
「一応、降霊術は違法だからねぇ。
その気が無かったとしても、事情は聞かないといけないしぃ
もしも何か取られているとしたらそれなりにケアが必要っていうかぁ…
最悪“再発防止”で暫く魔法を封印しないといけなくなるかもねぇ…」
アニーフは全然危機感のない喋り方をしているが、その内容はあまり良いものでは無かった。
寧ろ良くない、でしかないかもしれない。
「まぁ。大丈夫と思うけど。明日また様子見にくるねぇ」
不安になるくらい根拠のない事を言いながらアニーフは去って行ってしまった。
取り残されてしまったレンシアは、妙な胸のざわつきを抑えられずイオンを見つめてしまう。
温度を食べられた。
それがどういう事なのかは具体的には分からないが、きっと恐ろしい事に違いない。
レンシアは恐々と彼の頬に触れた。
彼の頬は柔らかくて、ちゃんと生きている気がしたけどどこかひんやりとしている。
あの時、感情を昂らせていたのは自分だ。
彼はいつも通り穏やかだった。
いつも自分にもしてくれているみたいに、泣きじゃくるリウムに寄り添おうとしていたから。
何故、そんな彼が精霊に目を付けられてしまったのだろう。
考えたとて別の存在の意図なんて分かるわけもないけど
ただ一つはっきりとしていることは、直接精霊と話を付けるしかなだそうだということだった。
「……イオンさん…俺は…この力をあなたの為に使えるのだったら……」
物理的な怪我や病気でない限り“癒しの魔法”は通用しない。
今レンシアが使えるのは、こんな力は不要だと思っていた“疎通”の力だった。
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