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温度 5

「……“魔法”は、神から“授かったもの”。 …何の利益もないのに、先に貰っているのです。 この身体だってそう。…心だって。」 「……」 「だからそれを、返しているだけに過ぎません 目の前の、返せる場所に、必要としている誰かに」 レンシアが微笑むと、エルメーザは目を細めて小さく息を吐き出した。 「…やっぱり…私は君が苦手だ……」 エルメーザの指が、そっとレンシアの頬に触れた。 こんな風に、彼から触れられたのは初めてだった。 「君を前にすると…自分がちっぽけに思える… それが凄く…怖いんだ……」 ぎこちない手付きで、どうしたら良いのか分からないというように。 レンシアは彼の手に触れられながら、彼に微笑みを向ける。 「なぜ?人間なんてみんな、ちっぽけでしょう。 助けてもらわないと一人で生きていくことすら出来ないのですよ」 「……そうだな…。 私は臆病なんだ…君みたいに強くあれない…」 「そのようですね。怖がりな生き物はよく吠えて威嚇しますもの」 「……はぁ…私を子犬呼ばわりか…?」 「ふふ」 エルメーザは呆れたようにため息を溢した。 そしてキラ、と眼を鋭く輝かせる。 「…それで、私は君の違反行為に加担すればいいのだな」 「ええ。二人を取り返しましょう」

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