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あちらの存在 2

「あなたは……精霊…?」 『人 がどう 呼 ん でい る かは 知ら な い だが 人は す ぐ ここ へ 来よ うと す る 力を 欲 し て……』 レンシアは息を呑みながらも、くつくつと笑っているような存在を見つめた。 「…い…イオンさんとジョルシヒンさんを、返してください……」 『返 す …? あい つ ら が 勝手に 落ち て き た のだ …』 「あの二人は巻き込まれただけなのです… あなたを呼んだのは、俺です」 レンシアの言葉に、その存在はくすくすと笑った。 『それ は お か しい なァ… あ い つ ら には 一度 “かえした” は ず だ それ を “かえされた” だけ だ…』 「かえした…?何を…?」 『教 え る 義理は な い』 「あなたは…二人の魔法を、食べた、のですか…?」 『ま だ まだ ま だ だ さいしょ は おんど その つ ぎ こと ば さいご に こ ころ』 不気味な歌を歌うとその存在はまた笑っている。 その歌は、あの時聞いた歌だとレンシアは思い出した。 「二人から奪ったものを返してください…」 『なぜ? な ぜな ぜ なぜな ぜ ?』 「…代わりのものがいるというのなら、俺の魔法をあげます だから……っ、お願いします……」 レンシアが頭を下げると、認識ができない存在は小さく唸った。 見えているはずなのに見えない。 感覚が掴めるようで掴めない、透明のような存在。 『いい だろ う お 前 は 贔屓 にさ れ て い る…… 実に 腹立た し い… が …』 案外すんなりと了承した存在に、レンシアは顔を上げた。 『だが… 代わり にそ の 男を 寄越す ん だ…』 そう言われて振り返ると、そこにはエルメーザの姿があった。 硬く目を閉じていて、その身体は半分ほど暗闇に溶けるように埋まっているように見える。 「何を言って…」 『そ う す れば…お 前は 魔法を 失わ ず 友 も 取り返せ るぞ … 』 「ダメに決まっています…!」 『何故 だ ? 憎 いのだ ろ う? その 男 は … お前 を 傷 つ けた …』 見えていないはずなのに、至近距離でその存在が笑っていると感じる。 『お 前 を 穢 した … 愛 して も い ない 癖 に……』 くすくすと笑いながら言われる言葉は、怒りが沸き起こってくる。

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