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死に行く時は後悔のないように 2
イオンはその頬を両手で包んで彼の顔をじっと見つめた。
「い、おんさん……?」
指先から伝わってくる彼の頬と暖かい涙の感触。
濡れた金色の睫毛が揺れていて、彼の呼吸や鼓動を近くに感じる。
生きてる。
何故だかそんな事を実感してしまうのだ。
そしてさっきまで、そんなのから一切隔離された場所にいた気がして急に恐怖が湧き起こってくる。
今見えている世界がもしかすると夢で、走馬灯の一環なのかもしれない。
そんな風に思ってしまいイオンはレンシアに顔を近付けた。
「…レンシアさん……、死ぬ前に言っておかないといけないことがありました…」
「え……?」
「…好き、です…あなたのことが……」
イオンは急いで伝えて、もう一度彼の身体を抱きしめた。
もしもこれが夢の中でも、これでとりあえず思い残すことはない。
そう思うと安心してしまって、イオンは身体から力が抜けていくのを感じた。
「な、何言ってるんですか…!まだ生きるんですよ、あなたは!」
「もうこれで…悔いはないっす……」
「ピクニックデートはどうするんですか!?チューをするのでは!?」
彼の身体を強く抱きしめているとバシバシと胸を叩かれてしまう。
その痛みは確かに生きているような感じがして、イオンは怖々と身体を離した。
レンシアは涙を溢しながら睨んでくる。
「俺には生きろと言ったくせに…
し…、死ぬなんて、俺を置いていくなんて…っ、ゆ、許しませんから…」
「レンシアさん…」
「…せ、責任取ってください……ちゃんと、生きるんです…っ!
いいですね…!?」
やっぱり、ずっとずっとこの人に会いたかった気がした。
その為に、死んだのだとしても上等なくらい。
イオンも涙を伝わせながら、微笑んだ。
「…はい」
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