267 / 513

国家欺瞞の君 1

レンシアとエルメーザの話では、イオンとリウムは同時に意識不明になったという。 事の詳細は結局分からず終いだったが、精霊によるものと疑いが掛かっていたようだ。 だが、身体には特に異常もない上に降霊の事実は認められず結局不問になった。 イオンが目覚めてすぐ後にリウムも目を覚ましたが、彼は火傷の所為で暫く苦しんでいるようだ。 魔法を誰かに向けて放つ事は、基本的には違法行為のため 犯人はすぐに探されたが、結局誰なのかは分からないというなんとも後味の悪い結果になり この事件の真相は何も分からずじまいになりそうだった。 イオンが目を覚ましてから三日ほどが経った。 確かに身体の変な所が痛かったが、特に問題もなくイオンは普通に学園生活に戻っていた。 放課後イヴィトとローラに誘われて、リウムの見舞いへと訪れた。 エルメーザとリウムの部屋は、他の寮の部屋よりも豪華で広かったが ベッドの上にいる痛々しい姿のリウムにはとても茶化す気にもなれない。 「…痛みはだいぶ引いたけど…なんか…あんまり色々、思い出せなくて……」 リウムは片手で頭を抑えながら呟いた。 なんだか、ここの所ずっと彼のそんな姿ばかり見ている気がするイオンだった。 「えー…俺のこと覚えとる?」 イヴィトはリウムに顔を近付けると不安そうに呟いた。 「えっと、確か…イヴィト…だよね……?」 「どこまでが冗談かわからんなぁ…」 「…ふふ、さすがにみんなのことは覚えてるよ」 リウムは眉を下げて微笑んでいて、その笑顔を見ると少しばかりホッとしてしまう。 イオンは彼に対して、主人公だからとあまりちゃんと正当に見ていなかった事に多少なりとも罪悪感を感じていたのだ。 色々あったが友人として、普通に元気でいて欲しいと思うのは変わらないから。

ともだちにシェアしよう!